2012/04/13(金)リモコンのデザイン
67個のボタン、継ぎ足されて、さらに25個のボタン。合計92個のボタン。という記事に触発されて。
別に、飛行機を飛ばしたいわけではない。
単に、テレビ番組を録画したいだけである……。
「ガラパゴスリモコン」が示す日本のもの作りの限界~リモコンで飛行機でも飛ばしたいの?~
思考実験の題材として、昔の一眼レフカメラを遠隔操作できるようにするリモコンを考えてみよう。
まず、
- 1.レンズキャップの付け外しボタンが要る。
- 2.フィルム換装ボタン
- 3.フィルム開始位置までの巻上げボタン、フィルム送りボタン、フィルム最終巻取りボタン
- 4.照度計(照度計の位置・方向設定)
- 5.フラッシュバルブ換装ボタン
- 6.レンズ選択換装ボタン
- 7.絞り設定
- 8.シャッター速度設定
- 9.焦点設定
- 10.フレーミング設定系(ズーム設定+カメラの向き(上下左右))
- 11.カメラ位置設定(上下、左右、前後)
- 12.シャッターボタン
一応、ユーザに、要求を聞いてみよう。
「遠隔操作できるカメラを作ろうとしてるのですが、カメラに何を望みますか?」困った。要求はシンプルなのに、設計してるリモコンは超複雑だ。これでは使ってもらえそうにもない。
『綺麗に写せるカメラだったら何でもいいよ』
「え?それだけですか?」
『え?それ以外に何か要るんでしょうか?』
「要求仕様は“綺麗に写せるカメラ”ですか」
『ええ、“綺麗に写せるカメラ”です』
ところで、現在の高性能コンパクトデジタルカメラを遠隔操作しようとしたらどうなるだろうか。
- 1.レンズキャップ付け外しボタンは要らない。代わりに電源ON/OFF(レンズカバーの開閉連動)操作のボタンを検討しなければいけないが、リモコンにタッチセンサーを付けるなどして操作不要にすることはできる。
- 2.3.フィルム操作系は一切要らない。撮った映像データはサーバ等に自動転送することもできる。
- 4.照度測定-絞り設定は自動化できる
- 5.フラッシュ設定も自動化できる
- 6.レンズは換装しない
- 7.絞り設定も自動化できる
- 8.シャッター速度設定も自動化できる
- 9.焦点設定も自動化できる
- 10.フレーミング設定系(ズーム設定+カメラの向き(上下左右))は要望があれば付ける。(省略する考え方もある)①
- 11.カメラ位置設定(上下、左右、前後)は要望があれば付ける。(省略する考え方もある)②
- 12.シャッターボタンは要望があれば付ける。(省略する考え方もある)③
「カメラの向きや、ズームをコントロールしたいですか?」ユーザが、それは一体何のこと?そんなことやって「綺麗に撮る」ことに意味あるの?(あとから要る所だけ切り出せば良いでしょ)と言えば、これらの操作系は要らない。
「カメラの位置を動かしたいですか」
「シャッター切って静止画を撮りたいですか?それとも動画で撮りっぱなしがいいですか?」
カメラでどういうものを撮りたいかがはっきりしていて、自分で操作したいという「写真のことを良く知っている(カメラに詳しいではない)」ユーザ向けでも操作は①~③までのわずか3つしか要らない。カメラの操作をこんなにシンプルにしたのは、カメラの技術が使いやすいよう進化したからだ。
リモコンの操作ボタンが少なくできるかどうかは、単にユーザデザインの問題だけではなく、ユーザの要望を如何に汲み取り実現できるかというシステム全体の問題でもあろう。