2020/01/23(木)改正された種苗法のポイント

種苗法について、とてつもなく酷いデマが出回ってるので、誤解を少しは解くべく物凄く粗い説明をば。

人間の役に立つ植物や動物──作物や家畜──は、もはや自然のままの種のものは一切用いられていません。全て「人の手によって」開発された品種・血統のものばかりです。

そしてご存知のように、育ちが速く、病気になりにくく、人間にとってより大きく役立つ(多くのものは、より美味しい)品種を研究・開発するためには、人の知恵と年月とお金とを膨大に使う必要があります。尊大な表現にとれるかも知れませんが、それらの品種は「人の創造性によって生み出された物=創作品」なのです。

しかし、一方、作物も家畜も、同じ品種のものを容易に複製──種や子を沢山増やし、育てる──ことができます。この「複製容易」という点も、(工業化された現代社会における)「創作品」と同じ性質を持つわけです。

人の手によって新しく生み出された価値の高い「種」は、創作品、、、つまり著作物や発明と同じ社会的・経済的位置にあると看做すことができます。

改正された種苗法のポイントは、新しい種苗を開発した人(作者や発明者に当たる人)ないしはその権利継承者(出版社や特許権者に当たる人)の許可を得てしか複製(種苗を育てること)をしてはいけませんという内容にあります。

この狙いは、日本で開発された、優れた品種の植物を、その地域外、特に外国で不正に利用されないことにあります。つまり「海賊版」を許すなってことですね。日本の出版社が主張しているのと同じ話です。

日本国内で利用する分には、開発された種苗を作物として育て、消費するにあたって、ロイヤリティを権利者に払わなければならないわけですが、それは次世代の種を開発される力になるはずで、日本の農業にイノベーションと発展をもたらす仕組みだというわけです。

ここまでが、改正種苗法を決めた人達の言い分。

ただし、外国(の研究機関や企業)──つまり悪名高きモンサント(今はそんな会社は存在しませんが)のようなところが権利を有する種苗を、日本で育成する際には、海外にロイヤリティを支払わなければなりません。悪く言えば、「モンサントの言いなり奴隷農業」をしなければならないわけです。

日本の種苗の権利を保護できるけれど、外国の種苗の権利を認めなければならない、そういう関係において、「日本の権利保護」が日本にもたらす権益と、「外国の権利尊重」が日本から流出する権益と、どちらが大きいのか、本来そういう観点から種苗法は語られなければいけません。

著作権において、日本が輸入超過で、著作権に関わる収支では国外への資金流出の方がはるかに大きいのに、日本の出版社が得ようとしてる小銭話にひっぱられて、著作権保護(期間)を強化してさらに損をする方向に突っ走っている。

それと同様な国益を損なう権利保護策を農業でもやろうとしてないでしょうか。そこを皆さんきちんと考えてください。