2020/07/19(日)人間パワーの調達に必要なエネルギー

「食品(≠料理)を生産するのに必要なエネルギーは、全て太陽光なのでCO2排出量は0と評価する」という考え方にはあまり同意はしないが、そのモデルについてもある程度は考察はしておくべきだろう。食品生産による排出CO2が0だと考えたら、人間がそれをエネルギー源として食するのに必要なエネルギーについてこれまで無視小としてきたものが無視できなくなるので、一応はこれについて検討しておく必要がある(やっぱりその影響は小さいよねという確認の為)。

私がこれまで自転車走行によるCO2排出について検討している時に、「無視小とした」のは、食品を生産現場から食卓にまで輸送する際のCO2排出と、食品を調理加熱する際のCO2排出である。


【食料運送に必要なエネルギー】

食品を生産現場から食卓にまで輸送する際のCO2排出:生産現場から食卓までの輸送距離は50kmで、全て4tトラックに満載して輸送するものと単純化する。
4tトラックの燃費 5km/L
1kgの積載量では、 5*4000 = 20000(km・kg/L)の輸送燃費

生産現場から食卓に届くまでに平均50km走るとして燃料1Lで届けられる食品重量 20000/50 = 400 (kg/L)

生産現場から食卓に届くまでに平均50km走るとして、食品1kgを届けるために必要な燃料50/20000 = 0.0025 (L/kg)


一日必要食糧(2000kcal分)500g=0.5kgを届けるのに必要なガソリン量は 0.5*0.0025 = 0.00125 (L)=1.24cc

ガソリンの発熱効率 34.5 MJ/L、1 MJ = 0.238 MCalなので、8.211 Mcal/ L、すなわち8.211 kcal/cc。

一日必要食糧 2000kcal分 を調達運送するのに必要なガソリンのエネルギー量は 1.24*8.211 = 10.1 kcal。食糧自体のエネルギーに比して2桁小さい。



【調理に必要なエネルギー】
東京ガスによれば、関東のキッチンにおけるエネルギー消費量は年間2.22GJ/年(4人家族)だそうだ(「家庭用エネルギー統計年報2012年版」では3GJ/世帯・年程度
。東京ガスの言う「キッチンにおけるエネルギー消費」を、調理に必要なエネルギーと考える。

1人・1日当たりで調理に必要なエネルギーは、2.22/4/365 = 1.52 (MJ/人・日)= 0.36 (Mcal/人・日) = 360 (Kcal/人・日)。

1日に食する料理のエネルギー 2000 kcal を調達するのに、 360 kcalの調理のエネルギーを要しているのだと考えると、一桁小さいものの、無視小というほどではない。


【食糧生産におけるCO2排出量再び】

「食品の生産において、そのエネルギー源となるカーボン(C)は、全て植物の光合成由来(動物の食料源は、食物連鎖を辿ると必ず植物になる)だから、食品生産のCO2排出量はゼロと看做し得る」というのは、やや荒っぽい考え方といえる。
実際の農産においては合成肥料や殺虫剤や耕耘や温度管理等において石油由来のエネルギーを様々使う。それらを一つ一つ積算して、農産物生産におけるCO2排出量を見積もっている資料がある。

その資料における米のデータ(米 10kg当りのCO2排出量 12kg-CO2)に着目して、再び人間の一日摂取エネルギーを全て米で摂った場合のCO2排出量を計算してみる。

~:text=%E7%B1%B3%3A1%E5%90%88(180cc)%20150g%E3%81%AE%E6%A0%84%E9%A4%8A%E6%88%90%E5%88%86&text=%E7%B1%B3%E3%81%AF100g%E6%8F%9B%E7%AE%97%E3%81%A7,%E3%81%AE%E9%87%8F%E3%81%AF114.9g%E3%80%82:米 100g 当たりのカロリーは 356kcal

米によるエネルギー2000Kcal分(2000/356*100=561(g))の生産時に排出されるCO2量は、12/10*0.561=0.673(CO2-kg)

自転車での1km移動時の必要エネルギー(26kcal/km)を米で補った場合のCO2排出量は0.673/2000*26=0.000875 CO2-kg/km これまで 0.0220 CO2-kg/kmと推算してきた値と比べると2桁近く小さい。