2010/07/21(水)a-bike随想 1
a-bikeのコンセプト
a-bikeのことは、自転車の新境地を切り開いたパイオニアとして、賞賛を惜しまない。そして私はこれを愛用している。が、あまりにも未完成で、とてもじゃないがまともに使えることを微塵も期待できるようなシロモノではない。普通に「走り」を考えたら、小径車なんて不利な要素ばかりでメリットはない。飯倉清が小径車のことをボロカスに言っているビデオがあがっているが、これを見て私は爆笑した。何もかも当たっているし、反論する余地はどこにも見いだせない。こんな奇形メカを賛美するなんて、確かに旦那やの道楽としか言いようがなかろう。
http://www.youtube.com/watch?v=lhaJP_9F0hs
「走り」という漠然とした評価軸を捨て、日常生活の限定した場面だけを切りだして、その中での機動性という歪な評価軸を採用したときのみ、小径車にはとるに足るものとして映る。そうした歪世界内の話ではあるが、a-bikeは光り輝いている。いや、a-bikeは自らが輝く世界を切りとって見せたといってよいかも知れない。
居場所からから小走りにでも行けるようなちょっと離れた場所まで行く時、あるいは最寄り駅から所用場所まで、そこそこの距離の平地舗装路の移動が必要な時、a-bikeは絶大な「利便性」の威力を発揮する。こんな状況は、漠然と「走り」を想念する場合には、極めて限定的、例外的と言わざるを得ないのだが、都会において日々頻繁にそうした状況の中にいる人々もいる。そうした特定の人々の「利便性」というモノサシを前提にさえすれば、a-bikeは画期的な自転車だ。
この自転車は「収納する⇔持ち運ぶ⇔折り畳み・展開する⇔乗車する」の間で頻々と状態変化するのに特化している。そのために、「走り」と、そしてそれ以上に「メンテナンス性」を惨いばかりに犠牲にしている。
a-bikeのもたらす「利便性」を訴える相手は、本来「一般人」でなければならないのだが、一般人は「走り」が犠牲にされることについて仮に我慢できても、「メンテナンス性」が犠牲にされるのは到底我慢出来ない。このことから、a-bikeは一般人向けを追求しながら、ついに一般人には受け入れ可能なものには仕上げられていない。このことによって、結局は、a-bikeを評価する人々が、わずかなマニアに留めてしまっている。
a-bikeが切り開いた「便利な自転車」の世界は、a-bikeを踏台に今後ますます発展するだろう。だが、a-bikeはパイオニアではあるが、その世界での成功者たりえなかった。
a-bikeの走り
a-bikeの利便性は100%完璧と評して良い。使ってみれば分るし、間違いなく満足を得られる。なので、ここではくだくだ書かない。乗り心地:悪い
乗り心地はあらゆる面で悪い。確実に慣れることができ、慣れれば気にならなくなる。が、一度跨っただけで断念する人も大勢いる。乗る前から「これは素晴らしい自転車だ」と信じているかどうかが、分かれ目のようだ。直進性:良い。
極限的に小さな径の車輪を見て、直進性の悪さを心配する人は多いが、直進性は極めて良い。直進性が悪くなるような、荷重のかけ方をする乗車は基本的に「できない」からだ。操作性:慣れないと、ハンドリング(左右への操作性)はむしろ悪い。
ライディングポジションが後ろにあるのを見て、前かがみになってハンドルに荷重をかけるほどに、操作性は悪くなる。曲がりたいと思ってもハンドルがうまく切れず、ある程度力をいれると突然ハンドルが大きく切れることになる。この「突然曲がる」特性を「直進性の悪さ」と考えて、上体に力がはいるとますます乗りにくくなる。バイクのスポーツライディングにいう「リアステア」のように、後輪にどっしり乗り、後輪の接地面をヨーの軸のイメージを持つぐらいになると、気持ちの良い操作性が得られる。後ろにどっしり乗ると、前輪がもちあがってひっくり返る心配が頭をよぎるかもしれないが、よほど極端な条件にならない限り、実はひっくり返らない。
制動性:可。悪くない。
一般の自転車の、ブレーキをある程度握るとこれ以上握れなくなる「当たり」があるブレーキ感に慣れていると、ぐにゅんと当たりがないブレーキ感は制動が効いてない不安に駆られるだろう。が、その実ちゃんと効く。日本向けに販売されているものは、JISの制動性基準も満たしており、どう間違っても「制動性が悪い」とは評せない。a-bikeで乗車したまま登れないような坂を、逆に下るような坂での十分な制動性はさすがにない。それはそもそも無茶な要求だろう。ただ、a-bikeでは、「やばい」と感じた時には、車体の後ろに簡単に飛び降りれて、そして自転車とともに止まれる。万一の時にはこの方法で十分止まれるので、ディスクブレーキのような制動性がないからといって不安がる必要はない。
走破性:決して良くはない。
が、我慢するというほどではなく、そこらのママチャリ程度には走れる。巡航で時速15kmは普通にできる。あまり長い距離の走行は辛く、一般人には連続3kmまでが目処だろう。小径車を見ると、ペダルをくるくる回さないと走らないのではないかと心配する人は多いようだが、ペダル1回転で3mそこそこ走る。これは一般的なママチャリよりはやや短いものの、そこらの16インチ車でさえこれより走らないモデルもあるぐらいで、決して悪い数字ではない。漕ぎ出し時のバランスの悪さを考えると、これぐらいが適当だと思う。
漕ぎ続けないと走らない。小径車故の、タイヤの回転数の多さや、ブレーキ類の配置のため、摩擦要因は多い。
登板力は貧弱だ。変速機もないし、ペダル周りやフレームの剛性感も十分ではない。5%の坂でも車体に無理をかけてる感がある。坂を駆け下りることに問題はないが、その場合も制動力は十分でないので注意が必要だ。
路面の凹凸には注意が必要だ。少々の段差や、ギャップも、前輪をうまく持ち上げると通れる。前輪を持ち上げる際に肩や肘を使って「ぐい」と持ち上げると、持ち上がりすぎてバランスを失いがちになる。手首のスナップで「くぃ」と軽く持ち上げるぐらいで十分だ。段差を降りる際も無理は禁物だろう。サスペンションがないため衝撃でフレームを痛めかねない。
耐候性:良い。
風の走破性に対する影響は小さい。相対的に一般の自転車よりも、車体の風を受ける面積は小さい。ただ左右のバランスが良い車体ではないので、強い横風を受けた時の不安定感が小さいというわけではない。雨天時にも「走る、曲がる、止まる」の性能はあまり影響を受けない。ただ、車輪が巻き上げた泥水が駆動系にもろにかかっているので、雨天走行後の注油や掃除のメンテナンスは欠かせない。