2012/03/12(月)結城浩「数学ガール/ゲーデルの不完全性定理」
著者の 結城浩さんが2009年に脱稿された際に、「ものすごく楽しみにしています」などと私は言っている。
『数学ガール/ゲーデルの不完全性定理』脱稿:なぬ~!?それは面白そう。大学一回生の時に無謀にも基礎数学の勉強会にチャレンジし、自分の能力を思い知ったからなぁ
12:21 AM - 24 Aug 09
大学に入りたての頃、不確定性理論を理解したくて、基礎数学にチャレンジしましたが全く理解できず、ゲーデルには全く辿り着くことなく諦めました。結城さんの本がどのようにこれを取り扱っているのかものすごく楽しみにしています。しかしながら、その時からゆうに2年半、某所から本を借りて積んでから半年、漸く読み始めたのだ。一つには学生の頃に基礎数学がまるきり理解できず、自分の数学の理解能力のなさを思い知らされた体験から恐怖心が先にたっていたこともある。実際今回も読み進めて話がゲーデルの証明の核心に近づくにつれ、読み進める速度は牛歩の如く遅くなっていた。
9:22 PM - 13 Sep 09
だが兎にも角にもその証明を、(理解したとは言えないが)トレースして最後まで辿り着くことができた。登頂した喜びというか、むしろ敗北の呪縛を解かれてほっとしたというのが一番近い感想だ。誰にでも理解できるように平易に噛み砕いて説明してくださった結城さんの手ほどきに感謝したい。
私がつまづくような場面では、登場人物の女の子たちユーリちゃんやテトラちゃん、それに「僕」が、いつもその疑問を代弁してくれ、そしてそれに対して「僕」やミルカさんの説明がなされていた。こうした助けのない厳格な数学書であれば、とても読み進めることはできなかったろう。
この本はゲーデルの不完全性定理を「ちゃんと知りたい」数学知識欲旺盛な全ての人に開かれた内容になっている。ゲーデルの証明に入る前に、様々な数学体系知識の下準備が、緻密に構成されて読者に示されており、それを辿っていけばゲーデルの不完全性定理の理解に必要な前提知識はほぼ揃う。
また同時に、数学が好きな「僕」と3人の女の子たちの人間関係、息遣いが見事に描かれていて、甘酸っぱい中高生の気持ちを思い起こさせる。とってつけたような「萌え」ではなく、数学に取り組む若人の素直な気持ちが、実に自然に表現されている。これら登場人物の立ち居振る舞いが、1行1行読み進める難しさに音を上げたい気持ちになった時に、読み進める勇気を思い起こさせてくれる。この数学解説のストーリーと、人物描写のストーリーの絡めかたが実に巧い。
女の子(達)が高尚な内容を説いてくれる内容だといっても、この本が「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」のように200万部も一気に売れることは決してなかろう。が、数学に純粋に興味のある人々を真の意味で育て、長い年月読まれ続けることは間違いない。